ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

読点は、意味の切れ目に打つ(2)

(6) 逆接に変わるところ

  • 警視庁の調べでは年々凶悪事件が減少しているが私たちの印象はそうではない。
  • 警視庁の調べでは年々凶悪事件が減少しているが、私たちの印象はそうではない。
逆接というのは、文章の流れがそれまでとは逆に向かうことです。当然、そこに意味の切れ目があります。それを視覚的にも示せば、分かりやすくなります。
  • 韓国料理というと、キムチや唐辛子入り料理など、辛いものをイメージするが宮廷料理は辛くない。
  • 韓国料理というと、キムチや唐辛子入り料理など辛いものをイメージするが、宮廷料理は辛くない。
  • 本が好きだという気持ちとは裏腹にその年は、本にほとんど触れることがなかった。
  • 本が好きだという気持ちとは裏腹に、その年は本にほとんど触れることがなかった。

(7) 2つのものを対比するとき

  • 初めての海外生活を楽しみにする一方で見知らぬ土地で長い間生活することに不安を抱いていた。
  • 初めての海外生活を楽しみにする一方で、見知らぬ土地で長い間生活することに不安を抱いていた。
期待と不安という相反するものについて書くのですから、その間に読点を打つと対比が明らかになります。

(8) 隣同士の修飾語の間に、予想外の関係が生じてほしくない場合

  • より多くの地域になじみのない人に、コミュニティ活動に参加してもらいたい。
  • より多くの、地域になじみのない人に、コミュニティ活動に参加してもらいたい。
「人」の前に、「より多くの」という修飾語と、「地域になじみのない」という修飾語が付いていますが、「より多くの地域」と読んでしまう人も少なくないでしょう。隣り合った修飾語同士が、想定外の修飾・被修飾の関係を持ってしまうケースです。
このような場合には、2つの修飾語の間に読点を打つか、あるいは「地域になじみのない多くの人に」のように語順を変える工夫をします。

(9) よく使われる別の意味の表現と区別したいとき

  • この製品により多くの電力を節約することができます。
  • <この製品により、多くの電力を節約することができます。
ここでは、「より多くの」と続けて読まれると、別の意味になってしまいます。そのために間に読点を打ちました。
  • 倫理的な問題がありそう簡単にはいかないと思う。
  • 倫理的な問題があり、そう簡単にはいかないと思う。
  • ある日私は携帯である音楽サイトに登録した。
  • ある日私は携帯で、ある音楽サイトに登録した。
  • 今夜の11時だ。
  • 今、夜の11時だ。(「今夜(こんや)」なら読点は不要)
これらは、「ありそうだ」「である」「今夜」というよく使われる別の言葉と混同されないように、読点を打ったケースです。

(10) ひらがなばかり、漢字ばかり、カタカナばかりが続く場合

  • そのようなことはまっぴらごめんです。
  • そのようなことは、まっぴらごめんです。
日本語は、漢字、ひらがな、カタカナが適宜混ざっていると、言葉の切れ目が分かりやすくなります。後に詳しく述べる「パターン認識」がしやすいからです。しかし、どれか1種類の文字ばかりが続くと、言葉の切れ目が分かりにくくなります。
  • 父は私たちのことが可愛くて仕方ないらしくよくちょっかいを出してくる。
  • 父は私たちのことが可愛くて仕方ないらしく、よくちょっかいを出してくる。
  • その提案は一見費用対効果の面から問題があるように見える。
  • その提案は一見、費用対効果の面から問題があるように見える。
以上をまとめると、次のようになります。

読点がほしいところ

  1. 「長い主語」「長い述語」「長い目的語」の切れ目
  2. 「原因」と「結果」、「理由」と「結論」の間
  3. 「前提」と「結論」の間
  4. 「状況・場の説明」と「そこで起きていること」の間
  5. 時間や場面が変わるところ
  6. 逆接に変わるところ
  7. 2つのものを対比するとき
  8. 隣同士の修飾語の間に、予想外の関係が生じてほしくない場合
  9. よく使われる別の意味の表現と区別したいとき
  10. ひらがなばかり、漢字ばかり、カタカナばかりが続く場合
これらはどれも、意味の固まり(意味の切れ目)を、読者に一目で分かってもらうための配慮でした。
その目的のために読点を打ちたいケースは他にもあるでしょう。たとえば長い挿入句があればその前後を読点で挟むなど、適宜応用を利かせてください。

一方で、すでにいくつか例がありましたが、一連の意味の固まりを読点で分断することは避けるべきです。
  • そこに勤める人々は必然的に深夜に、食事を摂る。
  • そこに勤める人々は、必然的に深夜に食事を摂る。
  • もっと、勇気を出して、良いと思ったことをためらわずにやってみたい。
  • もっと勇気を出して、良いと思ったことをためらわずにやってみたい。
  • 犯罪によって、命が失われていくことに、麻痺してきた。
  • 犯罪によって命が失われていくことに、麻痺してきた。
「深夜に食事を摂る」「もっと勇気を出す」「犯罪によって命が失われる」という意味の固まりを、読点で分断しないようにします。