ビジネスマンにとって適切な敬語が使えることは社内・外から信用される要素の一つです。しかし、慣れない敬語を使おうとして必要以上に背伸びをすると、往々にしておかしな日本語になってしまいます。
たとえば、「社長がお越しになられました」という言い方です。一見すると正しいように思われがちですが、答えはノーです。
なぜ「お越しになられる」が間違いかというと、まず「お越しになる」という言葉はそれ自体が尊敬語ですから、これだけで十分尊敬の役割を果たしています。
そこにさらに「れる」をつけると、尊敬語を重ねることになります。
これを二重敬語といい、敬語のルール違反になるのです。したがって、この場合は「社長がお越しになりました」が正解です。
似たようなことに「おっしゃられる」「お帰りになられる」「お召し上がりになられる」「お書きになられる」などがあります。このような表現も二重敬語です。
これらの言葉は「おっしゃる」「お帰りになる」「召し上がる」「お書きになる」が正解です。
二重敬語は、このように社内の地位の高い人ばかりでなく、お客様に使う人が少なくありません。社内の人同士ならまだしも、お客様に対しては会社の品位や社員の質の低さをさらすことになります。
尊敬語は、いくら重ねてもいいというものではありません。このへんがむずかしいところですが、過度な尊敬語の使用は避けることが大切です。


白沢節子