ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

予言してしまう
未来の出来事や様子を、予言して言い切ると、「へー、そうなんだ」と勝手に納得してもらえることがあります。どんな人であろうと、確実な未来を予測できる人はいません。だからこそ、リスクを負って、予言して言い切ることで、心に残る言葉が生み出せるのです。
好き嫌いや信じる信じないは別として、占い師や霊媒師の言葉には、説得力があります。それは、不確かな未来を断言して予言してくれるからです。人間は、他人に自信を持って断言されると、つい信じてしまう、という習性があります。
流行の情報を紹介しているWebサイト『トレンド・キャッチ! DX』のコピーを例に見てみましょう。

普通:この春夏は「ブーサン」が流行するかもしれない!

見本:この春夏は「ブーサン」が来る

「ブーサン」とは「ブーツサンダル」の略で、2010年の春夏女性フッションで注目を集めているアイテムです。“見本”のように予言されると、本当に流行が来そうな気がします。

健康食品などの場合、薬事法の関係で直接的な効果を訴求することが禁止されています。それゆえ、その健康食品を食べたり飲んだりすることにより、「直接的に○○な効果がある」という表現はできません。それでも、予言して言い切ることで、効果がありそうと思ってもらうことはできます。近い例として、ZENZOという宿泊施設のダイエット温泉宿泊プランのキャッチコピーを見てみましょう。

普通:ポッコリお腹をへこませるには?

見本:夏までにポッコリお腹にさようなら!

“見本”は、「夏までに」という未来を予言することで、受け手側に「お腹が凹んでいる自分」のイメージを具体的に想像してもらうことに成功しています。

「予言する」というテクニックは、本のタイトルでも有効です。

普通:『健康のために、体温を上げましょう』

見本:『体温を上げると健康になる』

『体温を上げると健康になる』(齋藤真嗣著)は、70万部超のベストセラーとなった本のタイトルです。未来を予言して言い切っているので、ストレートに心に突き刺さるタイトルになっています。
しかも、やるべきことの前提は、「体温を上げる」という誰にでもできそうなことです。それによって、「健康」という誰もが関心のある未来を約束してくれるのですから、多くの人が興味を持ったのは当然かもしれません。

このような「やるべき前提を示してから予言する」というテクニックは、仕事全般でも幅広く使えます。得意先に「自社のシステムの導入」を勧める提案書のタイトルを例に考えてみましょう。

普通:○○システム導入のご提案

見本:○○システムを導入すると、利益率が5%上がる

“改善”のように、「(やるべき前提を示してから)利益率が上がる」と予言されると、「とりあえず話を聞いてみようかな」と興味を持たれるでしょう。あとは、予言を裏付ける根拠をどれだけ示せるかです。予言するときには、その根拠が大切になってきます。
この項の冒頭に、「占い師や霊媒師が人気があるのは、未来を予言してくれるからだ」と述べました。しかし、ただ未来を予言するだけでは、人気の占い師や霊媒師にはなれません。人気がある占い師や霊媒師は、根拠を示すのが上手なのです。
根拠を示す手段は、「手相」「カード」「星まわり」「霊感」「オーラ」「前世」など何でもかまいません。それが受け手にとって納得できる根拠かどうかがポイントです。
仕事でもそれは同じです。キャッチコピーやタイトルなどで予言することで、受け手の気持ちを引きつけることができます。しかし、そこからビジネスにつなげるには、どれだけ受け手を納得させる根拠を示せるかどうか、にかかってくるのです。

川上 徹也(湘南ストーリーブランディング研究所代表)