ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

命令して言い切る
人は命令されると、何かしらの反発を覚えます。その一方で、命令されることに喜びを感じる心理もあります。競争が激しく、スルーされる確率が高い商品などの場合は、あえて命令形にして、人の心を刺激するという方法があります。
マス広告のキャッチフレーズでは、命令形のものは意外に少ないものです。なぜなら、受け手からの反発を恐れるからです。以下は、いずれも本のタイトルです。

見本:・『お金は銀行に預けるな』(勝間和代著)
・『大事なことはすべて記録しなさい』(鹿田尚樹著)
・『テレビは見てはいけない』(苫米地英人著)
・『小さいことにくよくよするな!』(リチャード・カールソン著)
・『現金は24日におろせ!』(小宮一慶著)
・『スタバではグランデを買え!』(吉本佳生著)

これ以外にも多数あり、とくにここ数年では数えきれないほどの命令形のタイトルの本が出ています。
「勝手に命令されると不愉快だから、命令形のタイトルの本は買わない」という人も多くいることでしょう。しかし、 アンチの感情を持つということ自体、心を動かされている証拠です。
書店に数多くの本が並ぶ現在の状況では、多少反感は持たれても、無視されるよりはマシとも考えられます。反発する人がいる一方で、命令形に弱い人も確実にいるのです。とくに話者が権威のある人物である場合、命令形は相性がよく、効果があります。
そのような例として、次の“見本”は、2010年にベストセラーになった『超訳ニーチェの言葉』の帯のキャッチフレーズです。

普通:人生を最高に旅しましょう

見本:人生を最高に旅せよ

このフレーズの話者はニーチェなので、“普通”だと、言葉の深み、重みが出ません。命令形だからこそ、効果があるのです。

通常、ビジネスシーンで「命令形」を用いることはリスクが高いと思われています。しかし、普通に送ったら無視されてしまうようなダイレクトメールやセールスレターなどでは、あえて「命令形」を使ってみるのもひとつのやり方です。その場合、「××しないでください」という否定の命令文を使うと効果があります。

普通:本気でやせたい方は、ぜひお申し込みを

改善:本気でやせる気がない方は、申し込まないでください

この“改善”は、一見、良心的な印象を与えます。しかし実際は命令形になっているので、自然と反発を覚え、心が動くのです。

川上 徹也(湘南ストーリーブランディング研究所代表)