ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

自慢して言い切る
企業や個人が「発信したい」と思っている情報は、極言すれば、ほとんどが「自慢」です。ただストレートに自慢しても、みんな反発するだけで、なかなか受け手の心をつかむ表現にはなりません。しかし、そこをあえて、自慢をして言い切ってしまう、という手法があります。うまくはまると、とても印象深いコピーになります。
たとえば、エステのCMを例に考えてみましょう。若い女性が面接を受けています。大勢の面接官たちはお年を召した女性ばかり。「あなた、カワイイわね。でも顔だけで世の中、渡っていけると思っているんじゃない?」と皮肉まじりに質問を受けます。それに対して、若い女性が答えるとインパクトのあるセリフとは?

見本:はい、思ってます。私、脱いでもすごいんです

「私、脱いでもすごいんです」は、1995年に流行語になったコピーです。それから十数年経った現在でも、「脱いだらスゴいのよ」みたいに(多くは逆の意味で)使われることがあります。
普通ならば謙遜するところを、ストレートに「私、脱いでもすごいんです」と自慢して言い切ったところが、受け手の心に残るコピーになったのです。
この自慢の仕方は非常に巧みです。CMで本当に自慢をしたいのは、広告主であるエステ会社の技術です。多くのCMでは、その「自慢」をタレントが代弁しています。
しかし受け手側は、タレントが企業の代弁者であることは百も承知なので、なかなか心に残るメッセージにはなりません。このCMでは、登場人物の女性が「自分のカラダを自慢する」ことによって、受け手は、企業が自慢しているようには感じません。ですから、ストレートな自慢が鼻につかず、印象的なCMになったのです。

女性誌の見出しでも、「私」に自慢させることがあります。

普通:ブーツの履きこなしがうまい人たち

見本:私が一番ブーツ上手!

普通:カッコいい夫を紹介します

見本:イケダンの隣に、私がいる!

それぞれ女性誌の『CLASSY』(2009年10月号)と『VERY』(2010年2月号)にあった見出しです。どちらも、「私」に自慢させて言い切らせています。「私」は、直接的には誌面に登場している読者モデルですが、イメージ的には読者それぞれが「私」に投影できるような見出しになっているのです。
ちなみに「イケダン」とは、98年に「シロガネーゼ」という流行語を生み出した『VERY』が、09年頃から提唱している言葉で、「イケてるダンナ」の略です。

川上 徹也(湘南ストーリーブランディング研究所代表)