ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

脅して言い切る
人間は脅されると、反発しながらも気になります。そんな心理を利用して、「脅して言い切る」という手法があります。健康、コンプレックス、お金、災害、老後、経済など、多くの人間が不安に思っている事柄であるほど、効果は高くなります。ただし、脅かすという手法は、あまり品のいい方法ではありません。必要がないときには、むやみにこの方法を使うのはやめましょう。
健康系の書籍の見出しには、この「脅して言い切る」という手法が使われる場合が多くあります。たとえば、「予言してしまう」で取り上げた『体温を上げると健康になる』という本の目次でも、脅して言い切る見出しがよく使われています。

見本:・体温が一度下がると免疫力は30%低下する
・体温が低いとガン細胞が元気になる
・筋肉は使わないとどんどん減っていく
・ストレスを受けると細胞もダメージを受ける

いずれも、このように言い切られると、「自分のカラダは大丈夫かな?」と不安になり、中身を読んでみたくなります。
では、別の例を見てみましょう。

見本:アラサー女も加齢臭

これは、『AERA』(2009年5月18日号)の見出しです。中年男性の加齢臭は市民権(?)を得ていますが、女性についてはあまり言われていません。このフレーズを電車の中刷りで見た30前後の女性は、やはりドキッとしてしまうのではないでしょうか。

次の例は、それぞれ子どもを持つ親向けの雑誌、『プレジデントfamily』(2010年6月号)、『edu』(2010年3月号)にあった見出しです(後者は言いきり形ではありませんが)。

見本:小学生の算数が危ない

見本:マザコン息子、ファザコン娘を育てていませんか?

子どもを持つ親にとって、子どものことは一番の関心事です。子育てや教育系の雑誌や本の見出しにも、この「脅す」方法はよく使われています。

災害や犯罪にまつわることも、脅されると不安を感じます。

見本:【首都圏直下地震】冬の新宿18時、その時あなたは

これは『週刊東洋経済』(2010年1月16日号)にあった見出しです。実際に18時に新宿にいる人は数多くいます。自分事に感じて、不安を覚え記事を読んだ人もいることでしょう。

自分の将来も、脅されると不安を感じます。

見本:無縁社会 おひとりさまの行く末

これは、『週刊ダイヤモンド』(2010年4月3日号)にあった見出しです。「一生、結婚はしないかも」と思っている人でも、やはり老後のことを考えると不安になるものです。まだまだ先のことと思いながらも、気になるのではないでしょうか。

次は、雑誌『日経ビジネス』の見出しにあったものです。

見本:・進化する変態企業 変われない会社は2年で滅ぶ(2010年2月8日号)
・銀行亡国 「再建」放棄が日本をつぶす(2009年12月14日号)
・「移民YES」1000万人の労働者不足がやってくる(2009年11月23日号)

このような経済の問題においても、悲観的な見通しを言い切られると、「自分の会社は大丈夫かな?」と不安になります。そして記事を確認したくなるのです。

このテクニックは、得意先への提案やプレゼンでも有効です。得意先やその商品・サービスの ウィークポイントを探し出し、「このままだと、こんな大変なことになりますよ」というニュアンスを言い切るのです。
得意先はちょっと「ムッ」とするかもしれません。しかし、そのフレーズが「ちゃんと自分の会社のことを考えてくれている」と思うと、耳を傾けようとしてくれるはずです。

川上 徹也(湘南ストーリーブランディング研究所代表)