ポイント解説

建物賃貸借契約書

建物賃貸借契約書に盛り込むべき基本的内容は、次のとおりです。
・目的物件の表示・使用目的
・賃貸期間・賃料
・敷金・費用負担・禁止事項
・解除・解約・当然の終了
・明渡し(立退料・造作買収請求権)
・損害金

<< 契約書作成ポイント >>

(第1条)
目的物件の表示は、賃貸目的物件が明確になるよう登記簿謄本を参照するなどして、正確に記載する。ただし、登記面積と実際面積とが異なるときは、両方あわせて記載した方がよい。
賃貸部分が一部であるときは、どの部分であるのかを方位、面積などを用いて具体的に記載する。

(第2条)
使用目的も、できるだけ具体的に記載する。特に、店舗の場合は営業内容もあわせて定めておくとよい。単なる商品販売のための店舗と飲食店では建物のいたみ方もかなり異なってくる。

(第3条)
賃貸期間は、2年または3年とすることが多いが、最長20年までは認められている(民法第604条)。

(第4条)
賃料の額、支払方法も明確にする。特約がなければ後払いでよい(民法第614条)。契約期間中の賃料の増減請求については、借地借家法第32条で認められているが、確認の意味で記載しておくことが望ましい。

(第5条)
敷金を受領する場合は、紛争を避ける意味からも、敷金の金額、増額の有無、利息の有無、償却の方法、返還の時期などについて、具体的に定めておくことが必要。

(第6条・第7条)
予想される費用については、誰が負担するのかをあらかじめ具体的に定めておく。
設例の第6条1号は、目的物件の修繕義務が賃貸人にあること(民法第606条)に対する特約。特約がなければ、小修繕も賃貸人の負担で行なうことになる。

(第8条)
賃借権の無断譲渡・転貸は禁止されているが(民法第612条)、事前の書面による承諾という点に特約の意味がある(設例の第8条)。造作・工作の禁止や使用目的変更の禁止などもよく見られる禁止事項。

(第9条)
契約解除事由を明確にしておくことは、意義がある。
賃料の不払いは法定の解除事由だが、原則として解除の際は催告することが必要(民法第541条)。それが催告なくして直ちに解除できる点が特約として意味がある。
敷金不足額の差入れや更新料の未払いなどを理由に解除できるかは、解釈上、争いのあるところだが、明確にしておくことが紛争防止につながる。

(第10条)
期間を定めた賃貸借の場合、特約がなければ途中解約はできない(民法第618条)。

(第12条)
建物賃借権は、正当事由がなければ賃貸人の更新拒絶は認められないが(借地借家法第28条)、更新しても更新料を請求するには、特約が必要。更新拒絶の通知は、期間満了の1年間から6か月前までの間に行なわなくてはならない(借地借家法第26条)。

(第13条)
造作買取請求をあらかじめ放棄する特約は有効(借地借家法第33条・第37条)。
残置物品の取扱いを定めておかないと、あとで紛争のもとになる。

(第14条)
契約終了後明渡済みまでの損害金は、特約がなければ賃料相当損害金として、最終賃料が基準となる。

(第15条)
連帯保証人の責任は、賃料・敷金・損害金等の賃借人の金銭債務。

(第16条)
賃料の増減に関する調停や明渡し等の訴訟をどこでやるかの合意もしておくとよい。

(第17条)
公正証書によって強制執行できるのは、家賃等の金銭債権だけ。
明渡し等の強制執行を行なうには、判決等が必要。
強制執行認諾文言。
・平成12年3月以降の新規契約については、定期借家契約が認められた。定期借家契約の留意点は、以下の通りである。
(1)書面を交付しての説明
(2)書面での契約
(3)終了6か月前までの通知
(4)中途解約の制限、など